【夢てくの】CO2地下封じ込め/メタン回収→発電に利用
FujiSankei Business i. 2008/2/4
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は昨年にまとめた第4次報告書で、21世紀末の地球全体の平均気温が20世紀末に比べ1・1~6・4度高くなると算出しました。環境省によると、日本の平均気温は最大で4・7度上昇する見通しです。現在でさえも温暖化に伴う熱波や洪水による被害が世界的に深刻化しているだけに、有効な手を打つことが喫緊の課題となります。その一環として実用化に向けた研究が進められているのが、温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)を地下に封じ込める技術です。
日本政府は昨年6月に行われた独ハイリゲンダムサミットで、「美しい星50」という地球温暖化防止戦略を提唱した。中身は短期・中期・長期の3本柱によって構成されており、長期的な課題が革新的な技術開発によるCO2排出量の大幅削減。その中の1つのテーマが、石炭火力発電からの排出量をゼロにすることだ。
石炭は石油や天然ガスの価格が高騰する中、比較的安価で供給不安が少ないという点が世界的に再評価されている。だが、燃焼時には多くのCO2を発生する。使用されるエネルギーごとのCO2発生量をみると、日本の場合は4割近くを占める。これを大幅に削減させるのがCO2を分離、回収して地中に埋める「CCS」技術。本格的な実用化に向けて国内外で検証が進められている。
≪“一石二鳥”の技術≫
CCSには、粒子間のすき間が大きい砂岩などで構成される帯水層へ圧入する方法や、石油・ガス層へ圧入し石油・天然ガスの回収を促進しながらCO2を貯留する手法がある。
関西電力の子会社である環境総合テクノスが、経済産業省の補助事業者となって2002~07年度にかけ取り組んだのが、CO2を地中の炭層へ注入し、都市ガスの主成分であるメタンの回収を促進するとともにCO2を吸着貯留する技術。回収されたメタンは発電所などで利用されるため、まさに“一石二鳥”のプロジェクトだ。
石炭には縦と横に、「クリート」という1ミリ未満の幅のたくさんの亀裂が入っている。クリートに囲まれるような形で無数に存在するのが、ミクロン(1000分の1ミリ)単位の小部屋。人間にたとえると亀裂部が動脈や静脈で、小部屋が毛細血管のようなもの。その小部屋の表面にはメタンが付着しているが、CO2の方が吸着能力が高い。このため、CO2が送り込まれるとメタンを追い出すという置換現象が発生する。こうした現象を活用したのが、今回のプロジェクトだ。
石炭層は一般的に約1200メートルの深さにあり、CO2の固定可能量は約10億トンといわれる。これは日本のエネルギー源別の年間CO2排出量(石油と石炭、天然ガスの合計)を8割程度カバーする量だ。
実験を進めるに当たっては、どこの炭田が最も適しているのか検討していった。候補地の1つが九州の炭田。しかし九州は地温が高いため小部屋の表面積が広がり、CO2の吸着力が弱いことが文献調査で分かった。この結果、九州に比べ地温が低い夕張市に白羽の矢が立ったわけだ。
今回の実験では深さ約930メートルの穴を開け、市販の液化CO2を注入した。本来であれば、液体でもガス体でもない超臨界の状態で注入することが最も効率的。だが、地下水の存在という計算外の事態が判明したため、炭層付近の地温は予想以上に低く、結果として液状で浸透していった。
≪コスト抑制が課題≫
プロジェクトで確認されたのが、CO2を注入する際に合わせて窒素も入れると石炭層の膨張を抑え、注入量が増える点。CO2だけだと1日当たり約3トンだったが、窒素と同時だと固定量は2倍強に増えた。また、メタンの回収量も約9倍になったという。
環境総合テクノスの名子雅夫・CO2炭層固定化プロジェクト室室長は「メタンをうまく活用することでコントロールできるという点を把握できた意義は大きい」と語る。
帯水層への注入はメタンの回収といった“見返り”がないのに対し、環境総合テクノスの実験は、エネルギー情勢が厳しさを増すのに伴ってメタン価格が上昇していった場合、事業性も見込める。今回の実質的な削減コストは、1トン当たり6500円。このうち約半分に当たるCO2の分離回収コストをいかに抑制できるかが、事業化に向けてのカギとなる。
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【用語解説】CCS
「Carbon Dioxide Capture and Storage=CO2の回収・貯留」の頭文字。工場や発電所など大規模排出源から分離回収したCO2を、地層に貯留する技術。G8などの国際会議でも、CCSの推進が頻繁に議論されており、欧米諸国や産油国を中心に具体的なプロジェクトが進行している。