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太陽の恵み 荒れる松林を“電田”に

                                                                                さきがけ on The Web(2008.01.05)

 「二酸化炭素(CO2)の排出枠を売ってほしい」。日本の要請は、環境本位に自立の道を突き進む秋田国に新たな可能性をもたらす光明だった。
 CO2排出量取引は、目標(排出枠)以上に削減できた国の余剰枠を、目標を超過した国が買い取って排出削減を進める制度。国産エコカーの普及や風車建設といった独自策で、大幅なCO2削減を果たした秋田国に対し、日本は5億円での余剰枠購入を申し出た。
 無論、秋田国に提示を断る理由などない。「これを資金にして、次は太陽光発電を定着させる」。若杉伸大統領は直ちに新エネルギー局に普及策の検討を指示した。
 太陽光に着目する目的は電力供給の安定化。風力発電に偏重すると、気象状況によって出力が変わり、電力の品質低下を招く。それを避けるには複合的なエネルギーを組み合わせ、弱点を補い合うことが不可欠なのだ。
積雪地域の太陽光発電アレイ 太陽光パネルの上は雪が溶けやすく、積雪地でも発電は可能。
最近は融雪タイプのパネルも開発されている
=美郷町北学校給食センター


 だが、新エネ局の検討会議はのっけから行き詰まった。きっかけは局長の一言。「太陽光発電は雪国には向かない。パネルに雪が積もればそれでおしまいだ。第一、日照時間が少ない」。誰もがそう感じていた。重い空気が会議室に充満した。
 沈黙から5分。1人の女性主事が口を開いた。「秋田でも普及は可能だと思います。効率は若干落ちますが」。集中する視線をよそに、主事は続けた。「融雪タイプのパネルが既に開発されているので、雪はあまり問題ではありません。地中熱を融雪に活用する技術も確立されていますし」
 日照に関してはこう説明した。日本の県庁所在地と比較して秋田市の秋と冬の日照時間は最少レベル。でも春から秋口までの半年間は東京より1日1時間ほど多く、発電に向いている。「年間発電量は東京の1割減ぐらいで済みますね」
 問題はどこにパネルを設置するかだ。これも主事が提案した。「松くい虫被害が深刻な沿岸部に“電田”を築いてみてはどうでしょう」
 松林の枯死は、住民の熱心な植林活動に反して年々拡大。せっかく苗木を植えても松くい虫への抵抗性がなく、30年すれば再び被害が目立ち出す。さらに深刻なのは、過疎に伴い、荒廃した松林が再生されないまま放置され始めたことだ。
 こうした土地にパネルを設置して防風防砂に役立て、豊富な光で発電までしてしまう。林務畑の若手ならではの独創的なアイデアだった。
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 提案から3年で、海岸線の光景は一変した。1枚当たり16畳ほどあるパネルが幾重にも並び、白砂青松と調和し、新たな景観を生み出した。
 パネルを32分割し、「1人1区画作戦」と銘打って売り出す市民出資型の「市民パネル」も登場。電田拡大の輪は学校や図書館、病院、ホテルなどにも広がり、家庭でのパネル設置も当たり前になりつつある。
 太陽光だけではない。ごみ焼却施設では焼却熱を、飲料水の貯水施設ではタンクから流れ落ちる水を利用した小規模発電を導入。さらに雪氷冷熱や地熱、畜産バイオマスなど多様なエネルギーの利用も加速。排出枠への需要は一層高まり、「環境立国・秋田」の財政を支える大きな柱に成長しつつあった。

【 メ モ 】
 日本の太陽光発電の累積導入量は世界トップだったが、2005年にドイツに抜かれて以来、差が拡大している。政府は一般住宅へのパネル設置を現在の約40万戸から、30年までに全世帯の約3割に当たる1400万戸まで増やす方針。普及を図る上で、エネルギー効率の向上やパネルの低価格化が鍵となる。
県が04年3月に策定した新エネルギービジョン(改訂版)によると、02年度の累積導入量は1141キロワットで、風力発電の55分の1。美郷町北学校給食センターやにかほ市のフェライト子ども科学館などでの採用に限られ、県は10年度までに2万5000キロワットまで拡大する目標を掲げている。 佐賀県は06年度に、パネルを新規設置した家庭への支援に乗り出した。